機会あって、昨晩「ル・グラン・マカーブル」という日本初演のオペラを見て来ました。これはもうオペラではありません。実際、作曲した本人が「アンチ・アンチ・オペラ」だと言っているんだからそうなんでしょう。グロテスクで奇天烈な世界でした。その中でこれはすごいな、と思ったのが今、東京でこのオペラをやる意味をきちんと見つけて表現していること。
天井から下がる無数のチェーンの描く懸垂曲線がストイックな美しさを見せるものの、その下にはフラフラとステージを彷徨うバーカウンター、いかがわしさ満載の衣装。メイド服の男性、暴走族の頭のような死神…状況を日本に置き換えて考えてみてくださいね、という演出の気持ちが伝わってくる。着ぐるみの白山羊、黒山羊も日本文化の中に感じる。極めつけは霊柩車か。
細部にまでその気持ちが行き渡っていると感心したのが死神(本当はネクロツァールという役ですが)の長ランのような上着の裏地。ちらりと見せてくれるんですが、これが国芳の描いた骸骨そのもの。ここまで持ち込まれると圧倒されてしまいます。ちなみに美術は中村竜治さん。
それにしても一番すごいなと思ったのは演奏者と歌手のみなさん。ルール無視の展開でできあがっているオペラなので、まるで間違った音を出しているようなことを2時間続けるのは至難の業。歌詞も理屈ではたどり着かないものばかり。よくもまあこのオペラをみなさん演奏できるまでになったものだと呆れるほどに驚きました。恐ろしいものに触れる機会をいただき、ありがとうございました、和田ひできさん。


