冗談ではなく、エルメスは鉛筆だって売っている。鉛筆削りだってある。まさかと思う人は検索してみるといい。ちゃんと出てきますから。
これはエルメスが年2回作っている「エルメスの世界」の2005年の第1巻に載っていた革巻き鉛筆。
酔狂だなあ、と思ったけれど、実際に見せてもらうと手に馴染む素敵な感触もある。どうしてこんな商品を思いついたのか、というときちんと理由があった。そもそもは若い職人たちが革を編む練習に鉛筆が使われていたのだそうだ。編んで作る革製品だけでなく、革のバッグの持ち手の芯にも使われているそうで、鉛筆に巻くとまさにこの芯の太さになるため、実は革で編んだ鉛筆というのはエルメスの職人たちにとって馴染みの深い存在だった。
…というわけでまさにエルメスの技術がここにある、という鉛筆なのです。どんな商品にも物語がある。とても大事なことだと思います。
エルメス
http://www.hermes.com/
中村又五郎さんの記事を先ほど読んだ。94歳になるんだ。又五郎さんを私が一番最近見たのは2004年冬の「今昔桃太郎」。出て来た瞬間に場内が完全に又五郎さんに奪われた感じ。
私、又五郎さんファンです。舞台にこの人が現れるだけでもう江戸時代に入ってしまいます。
ある時、どんなパーティーだったか忘れたけれど、そんな話を何人かの前でしていたら、後ろからふっと割り込んできた男性がいた。又五郎は私の妻のおじいさんでして…。怖い怖い。ともかく、又五郎さんがちらっと出ただけで世界は変わってしまうのです。
そんなことを思い出したのも、歌舞伎座の八月納涼大歌舞伎。中村さんちが総出で盛り上げる楽しい歌舞伎です。古典芸能はちょっと、などと言わずにぜひ。デザインのヒントもたくさんありますよ。
そういう私もそう長い付き合いをしているわけでもなく、私の先生はこの2冊の本。ペヨトル工房の「歌舞伎はともだち」の1と2。(3はちょっと趣旨が違いますので。)
発行人であるペヨトル工房の今野裕一さんからいろいろと見方を教えてもらった。言葉が耳に入らないっていうなら、迷わずイヤホンガイドを借りなさい、眠くなるなら柝を入れる人が上手で出入りするのを見逃さないようにするのもいいかもね、好きな役者を持つのもいいこと…。
当然のように勘九郎さんを楽しむようになり、そして必然的に又五郎さんが目に入るようになった。今野さんに言ったら、それはそうだよ、あの人なしに今の歌舞伎はないもん。
ちょっとだけ、八月納涼大歌舞伎に、ちらっと、又五郎さんが出たらいいな、と思ったりして。いや、この暑さ。無理はいけません。
又五郎さんの記事(東京新聞)
http://www.tokyo-np.co.jp/article/entertainment/tradition/CK2008060702000233.html
江東区、深川界隈を歩いていてふと目についた、霊巌寺の紋と瓦。
丸に左三階松、という名前の紋。真ん中の松が右に寄っていると右二階松だそうだ。ヨーロッパの紋章も面白いけれど、日本の家紋というのも相当に面白い。きっと言われがあったりするんでしょうけど、辿るのは難しい。
瓦の方は理屈が読める。屋根瓦の隅に時々ある水の印。火災除け。
日本の模様を読む。…読めるようになりたいものです。源氏香とか…知ってないとなぁ…と思うんですが、なかなか。
家紋を調べるならここか、と→紋処
http://www.asgy.co.jp/
福光屋は金沢の酒蔵だけど、デザインと言えることをきちんとしている。そして銀座にアンテナショップがあって、私も時々ここでお使い物を用意したり、自分のものを手に入れたりする。
今年のお中元のパンフレットも表紙が吉田カツ。夏場に少しだけ出す「夏吟醸」という微発泡性の純米大吟醸のラベルがこの絵だ。さらにお中元やお使いもののために日本の工夫をしている。一升瓶ならば風呂敷を、四合瓶ならてぬぐいを使った包装というのが可能で、宅配でもそれに応じた包装をするという。
私も冗談のように手ぬぐいを使っているけれど、和を騒いだり、エコを騒いだりする前に手ぬぐいや風呂敷の使い勝手の良さをまず知って戴きたい。
福光屋さんはさらに升やお猪口を使ってさらに遊んでいますけど。
福光屋
http://www.fukumitsuya.co.jp/
その昔、芭蕉が庵を結び、「奥の細道」の旅立ちをしたのがこの辺り。先週紹介したAmy Sylvester Katohさん、少し調べたらすぐにわかったのだけれど、加藤エイミーさんと言った方が伝わりやすいようだ。そのAmyさんがここで展示をしている。
1回目がお多福、2回目が藍染め、そして今開いている3回目がぼろ。エイミーさんはこんなものまで蒐集していた。かつて日本人がいかにぼろを捨てることなく利用していたのかがわかる。今のジーンズの工夫なんて完全に飲み込んでしまう。そしてそれはおしゃれだからではなく、必要だったからそうなったのだ。
藍染めの、穴の開いたところに藍染めの布切れが当てられ、刺し子で止められる。それが幾重にも重なっている。美しいかと単純に訊かれたら美しいとは答えられない。生活が感じられる。今のジーンズに感じるのは生活ではなくファッションだけだ。
麻布十番の「Blue and White」の加藤エイミーさんなんですね、と今回はこちらから声をかけた。はい、そうです、と手仕事の手を止めて応えてくれた。
エイミーさんは日本各地を訊ねるたびに目にした藍染めやぼろまでも買い求めるんだそうだ。
自分の持ち物に対する愛しさがなければこうはならないだろうと。
岐阜県、郡上八幡の渡辺庄吉さんに話がおよび、彼の店には今、大学を卒業した息子さんが戻って来て一緒にやっていることを話したらとても喜んでくれた。
過去を見ることはとても大事で、それをわかってくれたんですね、とエイミーさんは言った。
ボストン出身の女性にこうして私は日本を教えられている。しかも日本語と英語がぐちゃぐちゃに混ざった会話で。
先日、江東区方面を散歩していたら、かつて芭蕉庵があっただろう場所の近くの民家を改造したギャラリーを見つけた。ギャラリーの前に黒い大きな犬がいて、私を見つけるとゆっくり親しげに近づいて来た。犬をなでていると、中からひとりの女性が出て来て「犬は犬が好きな人がわかるんですね」と声をかけてきた。見れば日本人ではないのは明らか。多分長いこと日本で暮らしているのだろうと感じる。犬に誘われるようにして藍染めのコレクションを拝見する。日本の藍は世界中の藍色の中で一番深いと思います、とおっしゃる。
私などよりずっと日本を理解しているのかもしれないと思いながら見回っていると本があった。
「Blue and White Japan」。著者としてAmy Sylvester Katohと書かれている。お書きになったんですか、と訊ねると、はいそうです、とおっしゃる。1冊購入。ご近所にお住まいですか、と訊かれ、川の反対側からよく散歩に来るんです、とお答えする。
日本人ではできないアレンジをしているのが面白い。しかしなおかつ日本を感じるのは素材自体が日本なのとカメラマンが日本人だからかもしれない。
ページを繰っていたら、渡辺庄吉さんがひょっこり現れた。庄吉さんにも会っていたなんて…すごいなぁ。Amyさん。また散歩で立ち寄ろう。しかし、きっとAmyさんは日本人より日本に詳しそうだ。
Amyさんはこんな人
http://www.japanwelcomesyou.com/cssweb/display.cfm?sid=1286
久しぶりに国立科学博物館に行ってみたら、マツダの水素燃料によるロータリーエンジン車「RX-8ハイドロジェンRE」がポンと置かれていた。なぜここに?…と思ったらロータリーエンジン40周年の記念なんだそうだ。そこからずっとマツダのロータリーエンジン車のミニカーがずらっと並べられている。そして次の空間に入ったところで、1967年に発売された世界初のロータリーエンジン車「コスモスポーツ」が置かれていた。
効率のいいエンジンであることはわかっているものの、ロータリーエンジンを作るのは大変な技術が必要だ。マツダはこのエンジンに会社の将来を賭けているのだろう。ハイブリッドから電気という流れではなく、ガソリン燃料車から水素燃料車という一気にシフトする流れ。「RX-8ハイドロジェンRE」はガソリン燃料でも水素燃料でもいいというところにそれが象徴的に現れている。
マツダのロータリーエンジン
http://www.mazda.co.jp/philosophy/rotary/
おつかれさまです。では…。
ようやくビールが飲みたいっという気候になってきた。そんな時には日本の生ビールの方が似合うかもしれないが、味わうならこのオルヴァル。独特の細いライン、紫と金色のラベル。そして魚がリングを加えている。
オルヴァルはベルギー南東部の森林の中にある修道院。ビール工場は修道院の施設のひとつ。マチルダという未亡人がふとした弾みで結婚指輪を泉に落としてしまった。マチルダの祈りが効き、泉の中から指輪を加えた鱒が水面に現れ、指輪を返してくれた。マチルダは感謝してここに修道院を建てたという伝説があるそうだ。
それはさておき、こういう環境だけに生産量は限られている。自分たちの作ってきた形を変えずにいくことがここの役割だろう。結果として、独自の、一目でわかるボトルが成立している。
オルヴァル(英語)
http://www.orval.be/an/FS_an.html
デザインに関わるさまざまな出来事やユニークな試み、新商品の意図、デザイナーたちが日々思うことなどをとりあげていきます。
渋谷の街角をベースに分野にこだわらずにお伝えしていきます。